+ 恋と毒と相思華と 2 +


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「これは先生方、ご足労様です」
 現場についたところで太鼓腹にサスペンダー、「海坊主」の綽名を持つ船曳警部が振り向いた。こちらにやってくるトレードマークの禿頭がうっすらと汗ばんでいる。私や火村にはジャケットが適温だが、警部にとっては違うようだ。
「被害者は」
「もうすぐ運び出します。先にどうぞ」
 火村はちら、と私を見たが首を横に振った。くるな、ということだろう。私も自分の状態ぐらいはわかっていた。黙って頷いた。
 取材旅行の後だったことは幸いした。手ぶらで来ていた火村にデジカメは私のものを貸していた。メモリーはまだ十分過ぎるほど残っていた。カラの2ギガを入れてある。火村のものほど性能の良いカメラではなかったが画質を上げていたから問題はないだろう。
 ゆっくりと冷静な様子で遠ざかる火村を私は自分の腕を掴んで眺めた。ジャケットごしにニの腕に爪を立てる。振りかえらず、焦ることもなく、いつもと変わらぬ速度で火村は青いビニールシートの内側へ消えていった。残像が残る。思わず一歩を踏み出しかけた。だがどうにもできない。火村と飲み明かしたことを後悔するわけではなかったが、タイミングの悪さに胸の底が重い。
 空はどこまでも青い。普段の私ならば口笛の一つでもふきたくなるほどに。
 日常と非日常を隔てるシートを私はただ睨むように見つめていた。


「成程」
 火村が呼ばれるわけだ。
 遺体が運ばれたのを待ちかねて踏み込んだアパートの一室は、一瞬、血の海を思わせるほどの赤で埋め尽くされていた。私の目を惹いたそれは、しかし実際に血ではなかった。
 燃えるような色をしたヒガンバナが和室を赤く染めぬいている。それは声を飲むような有り様だった。青いなんの変哲もないバケツにぎっしりと林立したヒガンバナ、そのバケツが和室の中央に2つ置かれ、そして畳の上にも直にバラバラとヒガンバナが捲かれている。思わずDKを横切って近づけば和室の奥のほうには半畳の床の間が切られており、そこに置かれた水盤にもヒガンバナが生けられている。ぞくっとした。和室中に捲かれたヒガンバナよりも、床の間に生けられた、たった4本のヒガンバナのほうが圧倒的に狂おしい。水盤――菓子器かもしれない。白地に緑の筋模様の入った織部の器だ――のヒガンバナは反りかえる花弁の先まで瑞々しかった。逆に和室中に散らばる花は水を吸えなかったせいだろう、赤に黒ずんだ色を乗せてぐったりしている。その色味がますます血を思わせる。子供が癇癪でもおこして投げ捨てたような花、花、花。一体何故に犯行現場がこんな有り様になったのか。まるで想像もつかなかった。
 実際の殺人現場は和室の手前、板張りのDKだったようだ。人型に抜かれたテープ、その周辺に血が飛び散っている。――二日酔いに、これはキツイ。
 私は一旦、外へ出た。通りしなに横目で見ると火村は無言で、これだけはいつも持っているフィールドワーク用の黒い絹の手袋をはめていた。――相変わらず、いい横顔だ。とても昨日、酒の海に溺れてクダをまいていた友人と同じ人物には思えない。
 アパートの共用廊下に立って、一息ついた。肺の中の空気をいれかえる。一瞬、目を閉じた目蓋の裏に赤の残像が残っている。火村は大丈夫だろうか。
 こういう心配は無用のものかもしれなかったが、赤に染められたあの和室を見ると、この事件が彼の内に沈む鬱屈に触れなければ良いと思う。いつも真っ向から事件に向き合う男だ。たとえ、自分の内側を切り刻むとしても犯人への追及の手を緩めるようなことはすまい。
 もっとも、早く解決するかもしれないという楽観もあった。
 現場は先刻、私が車窓から眺めて「長屋のような」と形容したアパートのうちの一室だった。私がいる共用廊下の目の前にも別のアパートが見えている。迫っている、というほどではないが目の前のアパートからこちらを見れば夜だとしても不審な人物は見えただろう。そしてここは2階建てのアパートでひどく古い。階段は外についており灰色のペンキが剥げて鉄錆が浮いていた。上った時に気がついたのだが足音はそこそこ響いた。おそらくは壁も床も相当薄いだろう。物音や悲鳴を聞いているのではなかろうか。犯行時間の特定は可能だろう。うまくすればアパート内に目撃者もいるかもしれない。いやいや、油断は禁物だ。都会の常として、隣近所のことなぞ気にしないかもしれないし。それに――これだけ距離が密であれば、逆にプライバシーを慮って近所づきあいが薄くなる、ということもありうるだろう。
 風にあたって少しはマシな気分になってから、えいやっとばかりに再び現場に飛びこんだ。DKにいた鑑識が一旦引き上げるところだった。和室は手間取っているらしい。当然だろう。1DKのDK部分、つまりは現場において、一課のハリキリボーイ、とても刑事には見えない森下がちょうど手帳をめくり始めたところだった。火村への説明を仰せつかったらしく頭の中でいうべきことをまとめている様子だ。火村が(遅えよ)というように私を横目で睨んだ。さりげなく隣にたって、事件の概要を拝聴する。

「殺されたのは瀬沢信之28才。職業は花屋店員です」
「花屋?それでか?」
 思わず口を挟んでから、あまりに考え無しだと気がついた。火村がすかさず皮肉な口調でツッコミを入れてくださる。
「有栖川センセイがおっしゃってるのは、和室のヒガンバナのことですかね?花屋にある花とも思えませんが」
「話の腰折ったな。――すみません、森下さん。続けてください」
 火村を無視して、わざわざ森下に向かって謝ったことでこの狭量な友人は微かにムッとしたようだった。知るか。心の中で舌を出す。
「花屋店員と言いましたが、どうやら華道家の卵、という側面があったようです。篠野流、という華道の流派があるそうでして、そこの流派の師範代だったそうなのですが、2年前に破門されています」
 破門とはまた、穏やかでない。一体何をやらかせば、破門などという憂き目に遭うのだろう。
「発見者は、篠野詩織。20才です。瀬沢の恋人なのですが……」
 おお、八歳年下の恋人とはなかなかアレだな、と思う間もなく、鈍い私にも破門の原因は推測された。火村がその推論を口にする。
「家元のお嬢様に手を出して、破門か」
「そのようです」
 しかし瀬沢が破門されされた後、2年たっても付き合っているのだ。二人ともそれなりに本気だったのではなかろうか。
「篠野詩織はこの夏、二十歳になりまして、それを機に瀬沢の破門を解こう、ということになっていたそうです。それでちょうど明日なのですが、華道の展示会で瀬沢を呼び戻して花を生けさせる手はずだったそうです」
 それはとりもなおさず瀬沢が家元の令嬢の相手だと知らせるお披露目ではなかろうか。玉の輿……いや、逆玉か。嫉んでいる人間もそこそこいることだろう。しかしだからといって、殺すほどには思えないが……。
「詩織さんは一人娘なんですか?」
「――そうです。篠野家は結構な資産家らしいですよ」
 警察も当然、その方向で調べを進めているようだった。それにしても、と私は質素なDKを見まわした。碌に物もない台所だったが、使いこんでいるらしい、火村の下宿のような気安さが感じられる。カレーでも作ろうとしていたのだろうか、流しに置かれたボウルには剥かれた小さな玉ねぎが2つ、無造作に放り込んであった。
 瀬沢は意外と飄々と過ごしていたのではなかろうか。そして詩織嬢に無心をしていない様子が私に好感を抱かせた。
「それはともかくとして、篠野詩織が第一発見者なのですが、彼女は今朝、篠野家のおかかえ運転手に乗せてもらって9時少し前にこの部屋を訪れています。件の展示会の会場に、瀬沢と下見に行く約束をしていたそうです。チャイムを鳴らしても瀬沢はでない。鍵は持っていませんでしたが、寝坊でもしているのかとノブを回したら、開いた。いぶかしく思って覗いたところDKで背中を刺されてうつぶせになって事切れた瀬沢を見つけたそうです。驚いた彼女があげた悲鳴に住人と大家が駆けつけて通報になりました。通報時間は8:53分。凶器は刃物。おそらく家庭用の万能包丁でしょう。これは現場から見つかりませんでしたが、切り口から、わざわざ買ってきた物ではなく、家庭で使っていたものだろうと所見が出ています。瀬沢の遺体には移動した痕跡はありません。犯行現場はこのDKでほぼ間違いないでしょう。死亡推定時刻は昨夜の8時から深夜12時ごろの間だと出ました。死因は出血多量です。心臓を狙ったものが少し逸れたと思われます」
「犯人は自分ちから包丁を持ってきて、また持って帰ったゆうことですか?」
「そのようです。この家の包丁の数は篠野が一本だったと証言しています。それでなくとも瀬沢は独身男性です。万能包丁が2本あったとは考えにくいでしょう。1本はシンク下の扉に収まっていました」
 確かに私の家にも包丁など1本しかない。
 犯人は包丁を持ってやってきた――計画的犯行だということだ。
「一撃なんですか?結構、力いりますよね?心臓狙ったんやったら」
「角度から言ったら、瀬沢よりも10cm以上、身長の低い人物だろうな」
 火村が私のセリフを攫った。しかし面白くなさそうに続ける。
「けどな、アリス。これは突発事項じゃねえんだ。偽装する余地はあるのさ」
 黒の手袋で若白髪の混じった頭を掻く。思考をまとめるように口に出した。
「――室内に争った形跡はない。見ろよ、アリス。犯人は顔見知りだ。お茶をよばれたらしいぜ。そして冷静だ。湯呑がきちんと洗って片づけてある。しかしどこから出したかは、わからなかったんだな。この2客だけ別になってる」
 隣の戸棚の下の扉を開ければ揃いの湯呑みが見つかっただろうに。さすがに慌てていたのだろう。
「目撃者は?」
「火村」
 少し強い口調で呼んでやる。胸ポケットに手を入れかけていた火村は少々バツが悪そうだった。ワザとらしく咳払いなどしている。代わりに森下に尋ねた。
「物音がしたとか、争った声が聞こえたとか、あと目撃者とかはおらんかったんですか?」
「それが……」
 森下は言葉を濁した。それから気を取りなおしたように手帳をめくる。
「ここの隣り、203号室は空室でした。204号室というのはこのアパートにはなくて、その隣り、205号室の住人は」
 と、森下は私たちが登ってきた階段とは逆側の壁を指した。
 ちなみにこの部屋は202号室である。
「吉岡博人・72才です。夫人とは死別して一人暮らしをしています。耳が遠いようで物音は気づかなかったそうです。さすがに今朝の悲鳴はわかったそうですが」
 一般に女性の悲鳴のほうが大きさは同じであっても耳に届く。可聴域の関係だろう。
「夜は早いそうで、9時になると眠ってしまう、とのことで」
 8時ごろには風呂に入り、9時前には眠っている。かわりに朝は4時半に起きる。なんと健康的な生活だろう。真似をする気はさらさら起きないが。逆なら締め切り明けによくやる、と思った自分に目眩がおきた。人間として拙いかもしれない。
「ここの真下の102号室、そして103号室は空室です」
 おやおや、ここの大家さんは、採算は取れるのだろうか?余計な心配をしてしまう。しかしよく考えたら目の前には、採算など度外視した心優しい大家に住まわせてもらっている男がいるのだった。彼の下宿(いや、正確には元下宿というべきか?もう彼以外の店子はいないのだから)に比べればまだマシなほうだろう。
「101号室には管理人、日枝明子・58歳が住んでいます。上階の物音を昨晩9時過ぎに聞いたと証言しています。なにか重いものが倒れるような、どさっという音だったと」
 それが被害者が襲われて倒れる音だったというのはありえることだ。
「105号室の住人は伊東幸治21才。大学生です。金曜日のため、コンパに出ており不在でした。梅田での飲み会に7時から11時まで参加しています。そのあと、友人と話しこんで終電ギリギリまでマクドナルドにいたとか。証言は取れました。当然物音は聞いていません。
――で、こちら、201号室には」
 と森下は今度は逆側の壁を向いて指差した。
「5歳の男の子が一人でいました」
「親は買い物にでも行っとったんですか?」
「――はじめからお話します」
 森下は姿勢を正すと再び手帳をめくった。どうやら201号室には重要な何かがあるらしい。
「201号室の住人は間田優芽、29才。夫とは2年前に離婚しています。子供が一人いて、それが間田聡、5歳です。優芽は2年前から新地のヒュプソスというクラブでホステスをしています。店ではレイナと名乗っています。売れっ子らしいですね、凄い美人でしたよ」
 うっかり私情を挟んでから、森下は本題に戻る。
「夕べ、彼女は店を急に休みました。急に、とは言っても昼すぎ、3時ごろに連絡を入れてます。子供が風邪だとのことで。しかし昨日は金曜日です。店が忙しくなり、手が足りなかったため、店に来られないかと電話が入りました。これは店のママから証言が取れています。時間は19時半前後だったと。履歴を調べたところ、正確には19時22分となっていました。間田は迷ったそうですが、子供は薬でぐっすり眠っている。医者もたいしたことはないと言っていた。そのため店に向かったそうです。店にいたのが昨日夜9時前から本日深夜の2時ごろまで。店の人間に確認したのですが、8時半はすぎていたが、9時より前には入っていたという証言でした。忙しかったため、従業員はあまり注意を払っていなかったようです。今、店の客にあたっています。物音は聞いていないと証言しました」
 新地まで……というか、梅田で良いのか?
「40分ぐらいやよな」
 思わず呟いた。主語こそなかったものの、それに森下は我が意を得たりと大きく頷いた。
「微妙にかかっています」
 森下の物言いだと、彼女は疑われるべきなにかがあるのだろう。
 そしてアリバイは、あるかないか微妙なところだ。
「――それで?」
 火村が冷静に説明を促した。
「瀬沢と間田は付き合っていたという証言があります。当初、間田は言及しませんでしたが尋ねたところあっさりと答えました。今年の正月から付き合っていたそうです。ただし先日別れた、と」
「先日というのはどの程度前ですか?それに別れた原因は?」
 火村の淡々とした質問にはいっさい感情のフィルターがない。ただ情報を求めるだけのようだ。私も出きるだけ平静に、と自分に言い聞かせてみたがいつもながら難しい。二股をかけていたという事実が発覚すれば、先刻瀬沢に感じた印象はどうしても悪い方へと覆った。
「二人が別れたのは一週間ほど前のことです。原因は、瀬沢と篠水の縁談が、本格化したことだと」
 私も火村もさすがに暫し、沈黙した。
「それで……問題はなんやのんですか?」
 何かがあるのだ。推理小説家向けの事件と呼ばれる、何かが。
「間田は、自分は犯人ではないと言い張っています。それはともかく、現場には現金50万円が転がっていました。瀬沢のものではないでしょう。そんな金があったらこんなアパートには住んでいないでしょうし、勤務先の店長もそれを首肯しました。この金の出所は現在調査中です。そして――現場を見た婚約者・篠水詩織は、あの和室のヒガンバナ、あれは瀬沢が生けたものではない、と」
 それはどういうことだ?
 瀬沢でなければ犯人が生けたとでも言うのか?しかし一体なんのためだ?
 さっぱりわからない。
 火村がヒョイと眉を上げた。;
「――出番だぜ?推理作家」
 失礼な。
「一番わかりやすいのは花言葉やろな。瀬沢に対するメッセージか、見つけた篠水さんへか、それか警察へか」
 冷静に。平静に。
 犯人を限定しないで考えねば。
「――篠水詩織は花に詳しいようですから、後で聞いてみましょう」
 華道家元の娘である。むベなるかな。
「瀬沢よりも自分のほうがうまく生けられるゆうメッセージとか」
「有栖川さん……」
 情けなさそうな声で森下に呼びかけられて、それはないと気づいた。
「おい、アリス。自分の犯行を主張してどうする」
 その通りだ。
「せやなかったら、瀬沢さんの生け花はたいしたことないて言いたかった」
 ついでに言ってみる。
「華道家の仕業や、ちゅうことを言いたかった。すなわち犯人は華道家やない」
 火村はニヤリと笑う。
「ところでアリス。ヒガンバナの必然性がないぜ?」
 まったくその通りだ。
 しかしまったくの無駄弾でもなかったらしく火村はフム、と頷いた。
「篠水に、あの花は篠水流をやってる人間が生けたものかどうか、訊いてみるか」
 なるほど。それなら限定されるな。
 もう一つ、言おうとしてから私はちょっと言い澱んだ。
 目敏く気づいた火村が「どうした?アリス」と尋ねてくる。
 それでも言うべきか迷ったのは、ただ私がそう感じただけだからだ。
「犯人は芸術家やと思う」
「――その根拠は?」
 言いづらそうにした私の葛藤を感じたのだろう、火村が、この、犯行現場では冷徹の塊のような男が少しばかり口調と表情を和らげた。
「ただのカンや。
 あの生け花見てな、ゾクッとした。それだけのことや」
 多少拗ねた口ぶりになったのは許して欲しい。ただの勘だなんてこの男の前で言い出すほうが恥ずかしいではないか。しかし火村は笑わなかった。
「生けた人間は、芸術家か……」
 やや視線を上げて独り言のように口にする。
 気がついた。
 火村は「犯人は」とは言っていない。
 犯人以外が生けた可能性もあるのか……あるだろうな。
 火村の頭の中にはあらゆる可能性が駆け巡っているのだろう。
「流しもバスも洗面も、ルミノール反応はなし、か。指紋はもう少しかかるな――。アリス、写真は見るか?」
 火村に問われて、少し考えてから頷いた。デジカメの液晶画面なら大丈夫だろう。……多分。
 昨日まではツクリモノの殺人事件の構想の練るためにデータを蓄積していたデジカメだが、今日はホンモノの殺人事件の現場を写している。覗き込んだ液晶には小さな犯罪現場が切り取られていた。うつぶせに倒れ、横を向いた瀬沢は、非常に端正な顔をした青年だった。犯人は狙いすまして心臓の下あたりを刺している。気管から逆流したのだろう、色のない唇から一筋血を流しているのが不思議と臈たけた雰囲気だった。家元のお嬢様とホステスと、美人二人(多分)と付き合っていたのが頷ける。おかげで私があぶれるのだ。――失礼。
「とりあえず関係者から話を聞くか。篠水詩織からだろうな。――森下さん。彼女はどこに?」
「この真下の部屋――空室だった102号室を開けてもらって、そちらで待機してもらっています。ますはそちらで話を聞いて、必要があればこちらへ来てもらいましょう」
 DKは、犯人が凶器を残すことを厭ったために血が飛び散っている。しかもどす黒く変色してきている。
 さすがの火村もここに若い女性を呼ぶ気にはなれなかったらしい。否やはないようだった。私と火村、そして森下は階下へ向かう。少し遅れて鮫山警部補がついてくる。どうやら森下は、まだまだ危なっかしい存在らしい。我々3人だけでもどんな組み合わせか不思議だろうに学者然とした鮫山が入ると、さらに謎に見える4人組だろうと私は不謹慎な笑いを噛み殺した。

 

 


 
 
 1.作家の週末
 2.犯行現場
 3.証言者-1
 4.証言者-2
 5.証言者-3
 6.証言者-4
 7.真相
 8.犯人はあなたです
 9.相思華
  エピローグ
 
 
 

素材提供:空色地図